吾輩は「猫」である・にゃん きりたんぽ食べたい

2018年6月16日(土) 秋田 in フォントおじさん


秋葉さん家のちくわ

吾輩は猫である。名前はちくわといいます。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所で、ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかも、あとで聞くとそれは書生という人間中で、一番獰悪な種族であったそうだ。この書生というのは、時々我々を捕えて煮て食うという話である。
しかし、その当時は何という考もなかったから、別段恐しいとも思わなかった。 ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時、何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのが、いわゆる人間というものの、見始であろう。この時妙なものだと思った感じが、今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔が、つるつるしてまるで薬缶だ。その後猫にも、だいぶ逢ったがこんな片輪には、一度も出会わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうして、その穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。
この書生の掌の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。


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